2012年10月28日

夫婦のありよう

「祝婚歌」
吉野弘

二人が睦まじくいるためには
愚かでいるほうがいい
立派すぎないほうがいい
立派すぎることは
長持ちしないことだと気付いているほうがいい
完璧をめざさないほうがいい
完璧なんて不自然なことだと
うそぶいているほうがいい
二人のうちどちらかが
ふざけているほうがいい
ずっこけているほうがいい
互いに非難することがあっても
非難できる資格が自分にあったかどうか
あとで
疑わしくなるほうがいい
正しいことを言うときは
少しひかえめにするほうがいい
正しいことを言うときは
相手を傷つけやすいものだと
気付いているほうがいい
立派でありたいとか
正しくありたいとかいう
無理な緊張には
色目を使わず
ゆったり ゆたかに
光を浴びているほうがいい
健康で 風に吹かれながら
生きていることのなつかしさに
ふと 胸が熱くなる
そんな日があってもいい
そして
なぜ胸が熱くなるのか
黙っていても
二人にはわかるのであってほしい

『贈るうた』(花神社)より


(今までに幾組かの二人の門出にこの歌を贈った。)

2011年10月19日

いのちの根

なみだをこらえて
かなしみにたえるとき
ぐちをいわずに
くるしみにたえるとき
いいわけをしないで
だまって批判に
たえるとき
いかりをおさえて
じっと屈辱にたえるとき
あなたの眼のいろが
ふかくなり
いのちの根が
ふかくなる

相田みつを『新版 にんげんだもの 逢』角川文庫、36-37頁

2011年7月25日

星野富弘の詩

思い出の向う側から
一人の少年が走ってくる
あれは白い運動ぐつを
初めて買ってもらった日の
私かも知れない
白い布に草の汁を飛び散らせながら
あんなにも
あんなにも嬉しそうに
今に向かって走ってくる

星野富弘『四季抄 風の旅』(立風書房)59頁

著者は昭和21年生まれ。大学を卒業後中学校の体育教師として赴任。わずか二か月後、クラブ活動の指導中誤って墜落。以後、手足の自由を失う。九年間の病院生活ののち、不治のままに退院。自宅にて療養しながら、筆を口にくわえて雑誌や新聞に詩画を連載執筆している。(1982年出版当時の略歴)

2011年5月25日

時の共鳴

音楽は時の流れに乗っている。
そこから生まれるのは感動。人に語らいを促し、人間を動かす。
職人は手練れのリズムで素材と交わし、問いかける。
いかによく伝わるかという時に絞られる。

2009年1月30日

響く

夜、寺の鐘が鳴る
その音が周囲に響き渡る
やがて訪れる静寂
それでも余韻として残る
無限小に響き続ける
それは永遠(とわ)への響き
心のふるさとへの響き

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