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2016年11月18日

廣松哲学の主要論文に触れて

(『廣松渉哲学論集』熊野純彦編、平凡社ライブラリー、2009年)

 廣松渉は大森荘蔵と並んで戦後日本の二大哲学者。
 本書は廣松哲学の入門用として熊野純彦が編んだ。廣松の主要論文が6篇載っている。彼はマルクス主義者だったが、これらが書かれた頃になると廣松哲学と呼べるほどの独自の哲学を論じている。量子力学や相対性理論もその哲学に取り入れている。だが、数式は少ない。それでも物理の素養もあることをうかがわせる。ちなみに、彼の文体は難しい漢字の訓読みが結構出てくる。これで読み手に負荷をかける。それ以上に内容が抽象化されている。一読しただけでは理解できない。もちろん、理解できる部分はある。だが、その論文全体の真意を理解するには並大抵のことではない。ただ、本書を読んでいて、その明晰な思考の流れを泳ぐ心地良さをときに感じた。これは名のあるどの哲学者にも言えることなのかもしれない。
 ある論文では、まれに「!」を使い熱いところを見せている部分もあった。まだ若い頃にそれが書かれたのかもしれない。また、ある論考では大森荘蔵が出てきたこともあった。攻撃的な批判ではなく、敬意を込めて、彼と自分の考えは違うことを語っていた。同時代を生きた彼らはきっと互いを意識していたのだろう。
 文中、たびたびドイツ語が出てきた。哲学者にはフランス語やドイツ語が使える人が多い。彼はドイツ語が使えたようだ。廣松が影響を受けたマルクスがドイツ人のためだと思われる。

 本書は廣松の論文がそのまま掲載されている。だから、廣松の思考を身を持って感じることができる。廣松と直に向き合うことができる。彼の思想を理解するのは一筋縄ではいかなくても、彼の生の声を感じることができる。その人となりも少しは感じることができるかもしれない。その論考に苦しみ、ときに睡魔が襲い、そして、夢中で読める幸せな時間を過ごすことができる。それが一次文献に当たる醍醐味だと思う。

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