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2016年9月12日

心の哲学の始まり

(アリストテレス『心とは何か』桑子敏雄訳、講談社学術文庫、1999年)

アリストテレス(紀元前384ー322年)は古代ギリシアの哲学者。心を哲学的に論じた史上初めての書物。近代の心理学とは趣きが違う。実験を示した考察ではない。本書はこれ以前の学説を総合的に検証し、批判し、独自の考えを繰り広げる。

心は、すべての生物が生きていると言われるとき、その原因とされるものである。そのような原因としては、栄養摂取能力、感覚能力、運動能力、思考能力がある。本書ではこれらが生物の身体との関係で把握される。原因を求めるアリストテレスの特徴が反映されている。人間だけでなく、彼は生物全般を視野に入れている。

訳者は本書を『心とは何か』と訳しているが、これは独自の訳で、一般には『霊魂論』や『魂について』などと訳されている。ギリシア語の「プシューケー(psyche)」を訳者が「魂」ではなく、「心」と訳したのにはわけがある。魂には、肉体から独立したものという意味がある。しかし、アリストテレスのこの議論では、プシューケーが身体から独立して存在するということを前提にしておらず、これは身体から独立かどうかという問いを立ててもいない。アリストテレスは、プシューケーが身体から独立した存在であることを否定している。そのため、訳者はプシューケーを魂ではなく、心と訳した。他にも、「終局態(エンテレケイア)」、「実現態(エネルゲイア)」、「可能態(デュナミス)」とアリストテレスの重要な用語にも独自の訳を施している。

分かりやすく訳していても難しかった。ただでさえ哲学自体が簡単に理解できるものではないのに、ましてここで扱うテーマは心。はるか昔から現代に至るまで謎の多いこの心。誰にでもあって一番身近な心でありながら、一番分からないものかもしれない。その心を正面から向き合ったアリストテレス。彼は生物学者の側面を持つので、フィールドワークを重視し、そこから得た考えが、心と身体は元々一つであること、そして「心は身体を動かす」(38頁)という主張に至った。それは生物学者としての豊富な観察などの体験から得た考え。

そして、最終的な結論は、触覚が生きていく上で一番欠かせないものであり、その他の感覚はより良く生きるためにあるものと説く。

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